読書:戦国の陣形(乃至雅彦)

どうも神原/片倉です。

最近、古代から中世の戦術や兵器についてずっと勉強しているのですが、
その中で面白かった本をちょいと紹介します。

 

 

戦国時代に用いられたとされる陣形、
例えば魚鱗、鶴翼、偃月、車懸り、といったものが
実際には後世の創作に依拠する部分が大きいのではないか、という疑問から
様々な資料を比較検討し、実態はいかなるものであったか詳らかにしていく、
という本です。

んで、ぶっちゃけると「戦国時代にそんなものは(ほとんど)なかった」

という結論に達します。マジかよ。

 

概要をざっと書くと

天武天皇による律令時代に一度は軍制が整備され、
陣形や隊形といったものが整備されたにもかかわらず、
平和な世が続いたために失伝し、
鎌倉以降は武士という「私兵団」の散兵戦術が台頭、
長年に渡ってこの散兵戦術が機能し続ける。

ようやく武田信玄が「陣形」の概念を作ろうとしたところで、
上杉謙信が信玄の首を獲るためだけに編成した「隊形」によって
「陣形」の概念をぶち壊しにしてしまい、
武田も北条も「隊形」の整備を余儀なくされる。
(陣形を整えても、突撃敢行の隊形でぶつかってこられたらひとたまりもない)

「陣形」らしい「陣形」が現れるのは秀吉の朝鮮出兵あたりからとなる。
(といってもやっぱり隊形っぽさが抜けていない)

 

みたいな感じです。

車懸りってのは、ごく単純な縦長の行列になって突撃して、
次から次へと新手をぶつけることで敵軍を拘束し、
最後に総大将が本陣に切り込んで敵の大将の首を獲る、
という必殺技であって、
輪になってV字の突端を叩く、というわけではないみたいですね。
鶴翼もV字でなくハの字だったっぽいとかなんとか。

 

今年(2016年1月)に出版された本ということで、
最近の研究成果もいっぱい引用されていて信憑性も高いのではないでしょうか。
これに対する反論の本も出たら良いなあ。

 

僕自身は日本史に興味があるわけではなく「戦術」そのものに興味があったので、
「へえ、そうなんだ」くらいにしか思わなかったのですが、
元来日本史好きの方には衝撃的な内容なのではないかと思います。

 

あと、どうでもいいことなんですが、文章中に

>>語弊を恐れずいってしまえば「ライダーキック」や「ティロ・フィナーレ」のような必殺技名のニュアンスで受け止めるといいだろう。

って書いてあるのが面白すぎて爆笑してました。
なぜよりにもよってティロ・フィナーレを。

 

あと、最近読んだ本はこんな感じです。
どれも戦術に関しては大変興味深かったのでおすすめ。
特に孫子クラウゼヴィッツはマストバイでした。
色々と読んでいると、クロスチェックが大変ですが……

 

 

あとは秋山真之戦術論集とか軍事学入門とか戦争の物理学とか、
色々読んでいかねばなりません。

 

読んだらまたレビューを書きます。

 

んでもって小説を書きます。

かき集めた資料は八月中に全部読破することを目指してガンバルゾー 

 

同人|「ロールシャッハの妖怪姉妹」のDL販売(追記)

標題にあるとおり、

拙著「ロールシャッハの妖怪姉妹(R-18)」のDL販売をBOOHにて始めました。

価格は500円です。

元々PDFは販売していたのですが、

今回は EPUBKoboKindle 、PDF(PC&タブレット用・スマホ用)

を用意して、より読みやすいものを選べるようになっています。

書籍版(800円)もC90に持っていきますが、

これを機に電書もいかがでしょうか。

Kindleアプリに.mobiファイル突っ込むとすげー読みやすくて良いですよ)

 

kanbara-umbrella.booth.pm

 

本文サンプルは以下です。お燐ちゃんの自慰シーン付き。

www.pixiv.net

 

ちなみにDLSiteにも販売申請を出しています。

こちらも申請が通り次第、告知しますのでどうぞよしなに。

DLSiteさんのセルフレーティングに抵触するため、

販売できないことになりました。

しばらくBOOTHをメインにしていくことになりそうです。

販売チャンネルは増やしたいのですが、どうしたものやら。

同人|秋季例大祭について

気の早い話ですが、秋季例大祭に向けて

「早苗の世界」という短編集を発行する予定です。

pixivや東方創想話で6本ほど公開している話に加え、

5~6本の話を書き下ろします。

 

創想話での最新話はこちら。早苗と阿求の話です。

coolier.dip.jp

 

pixivでの最新話はこちら。

www.pixiv.net

 

早苗の世界シリーズはこちらから。サクッと読める一話完結の短編です。

www.pixiv.net

 

艦これ書いたり東方書いたりで忙しい奴ですが、

今後ともどうぞよしなに。

同人|C90受かってました。

どうも神原/片倉です。

C90にてスペースを頂きました。

二日目のJ40-bにて、艦これの二次創作小説を頒布する予定です。

Pixivで連載していた「まいのわ嵐」を大幅に改稿したうえで、書き下ろしの短編エピソードを追加した「完全版」となります。たぶん。

まいのわ嵐というのは殺伐系ガンスリンガー・コミュニケーションです。

撃って撃たれて巡り会う話です。

 

www.pixiv.net

 

表紙をお願いしている方とか価格とかの詳報はまたのちほど。

なんか400Pを超えそうで自分でも馬鹿じゃねえのかとか思ってます。

めっちゃ圧縮して250Pに収めました。致命傷で済んだぜ。

 

あと、既刊のロールシャッハの妖怪姉妹も置いておきます。

さとこいについて本気出して考えてみた感じの心理学ネタ小説です。

[R-18]「【サンプル】ロールシャッハの妖怪姉妹」/「神原傘」の小説 [pixiv]

漫画|小百合さんの妹は天使 妹ちゃんが比喩じゃなく天使



小百合さんの妹は天使



 ひとことで言うと、姉妹の甘々百合です。

 「魚の見る夢」のような倒錯を前面に押し出した暗くビターな百合ではなく、「神様ばかり恋をする」のような明るく甘々な百合です。





 神様ばかり恋をする(2巻はまだ出ないんでしょうか……)



 花屋で働く地味な女性、小百合さん。

 そんな彼女が、親の離婚によって生き別れになった妹と十三年ぶりに再会。

 「お姉ちゃんに会いたいとお願いしていた」妹は天使になり、お姉ちゃんとコイビトになるため、小百合さんと二人で暮らすようになる。

 (ちなみに妹が天使に見える人はごく少数)



 出会ったはずみにキスしてしまったり、デートに行ったり、同じベッドで寝たり。

 天使な妹ちゃんから熱烈なアプローチを受ける小百合さんは、戸惑いながらも妹となんとかかんとかやっていく。



 妹ちゃんが天使になった理屈とかはどうでもいいんですよ

 ここに百合がある。

 僕は百合が読みたい。

 それでいいじゃないか。

 それで……それで……





妹「私・・・おねえちゃんとセックスしたい・・・!」

姉「・・・?」(呆けた顔)



  せや!それや!

 妹ちゃん、はようパクっと姉ちゃん食ってまえや!



 いえ、レズセックスにしか興味がないわけではないのですよ。

 レズセックスがあると嬉しいというだけで、ソフトな百合も素晴らしいと思います。

 ボロが出てきましたが、ともかくシュガーな百合は大好きです。

 citrausみたいなビターな百合も同じくらい大好きです。





citrus 1~4



 つまりお前百合なら何でもええんちゃうかというとそうでもなくアンテナにひっかからないものもあるのですが、そうであっても今後も僕の本棚では百合専用の棚が四列ほどを占めるでしょうし、Kindleの「百合」コレクションの冊数が膨れていくことは疑いようのない未来です。

漫画|私の無知なわたしの未知 溺死していく百合



 百合には付きものの単語、

 「耽美」

 我を忘れて事物の美しさに思いを深く巡らせること。





 私の無知なわたしの未知



 この作品には「耽美」より「溺死」という言葉がふさわしいのかもしれません。

 周囲から何も知らされずに育った無垢な女性、嶋田湊(しまだみなと)と、

 歯に衣着せぬ物言いが特徴的な職場の先輩、朝海真耶(あさみまや)。

 OL二人をめぐる恋愛模様が描かれます。



 嶋田湊の周囲の人間は優しく、残酷な現実を彼女に突きつけないようにしていました。

 嶋田湊はそんな周囲の人々の望むがまま・言われるがままに生きてきました。

 しかし、朝海真耶との出会いをきっかけに自らを巡る様々な人間関係のもつれが露わになり、彼女が無知であったがゆえに、未知であった真実に振り回されます。

 まるで水に溺れ、もがき苦しむかのように。



 女の子がキャッキャウフフしている百合ではなく、昼ドラのような(もはや慣用句)ドロドロした百合です。

 「僕は女の子がキャッキャウフフしている百合の方が好みなんだよなあ」と思っていたのですが、よくよく考えたらユリ熊嵐を好むという点で嘘八百もいいところということに気づきました。

 ごめんなさい。ドロドロな百合も大好きでした。

 僕は百合ならなんでもよかったんです。



 さておき、残念ながら、読んでいてハッピーな気分には(たぶん)なれません。

 それでも本作を読み進めてしまうのは、嶋田湊が本質的に持つ「明るさへ向かおうとするベクトル」のようなものが物語に働いているからなのだろうか、などと考えてしまいます。

 あるいは、物語に組み込まれた「人情ミステリめいた仕掛け」の行く末を見届けたいという好奇心が働いているのか。



 文句を一つ言うとすれば、Kindle版だと1巻1巻が短いので、まとめて出してほしかった、というところですかね。端末で他の本を探すときに存外に面倒なので。





 Kindle版まとめ買い



 ともあれ、Kindle版の完結が待ち遠しいところです。

 願わくは、嶋田湊が周りの優しさに溺死せず、水面の空気を得られますように。





 あ、溺死系の百合といえば「魚の見る夢」もお薦めです。

 こちらは、実の姉妹が様々な鬱屈した感情と屈折した愛情をもつれあわせる溺死系の……なんだ最初からドロドロ系も好きなんじゃないか(自己憤慨)。



漫画|メイドインアビス




 メイドインアビス(1)~(4)



 あるとき発見された大穴、アビス。



 『全て踏み明かされたこの世界の 唯一最後の深淵である』

 本分より引用



 アビスから発掘される『遺物』は千金の価値を持つ。

 名誉、金銭、好奇心、それぞれの理由で、それぞれの『探窟家』がアビスで命を落とした。

 『探窟家』が集う穴の外縁にはいつしか街まででき、『探窟家』は相互扶助の組合を作り、『探窟家』を志す者へ訓練を施すようになった。



 そんな大穴に挑む幼い少女、リコは、アビスの第一層で一体のロボット、レグと出会う。

 レグは記憶を失っていたが、すぐに順応し、探検隊の見習いとして生活することとなる。

 そんなとき、偉大な探検家であった母親からの手紙を受け取ったリコは、レグと共にアビスの底を目指すことを決意する。

 推定深度20000mの奈落の底で、リコとレグを待ち受けるのは一体――



 とまあそんな概要です。

 まずは作画の丁寧さが素晴らしい。異世界感がよく描かれていて、眺めているだけで幸せになれます。まるで絵本のようなファンタジー。

 また、探検隊の『笛』という階級システムは人物の練度を端的に表現できて良いなあとか、そのために見習いの『赤笛』であるリコが挑もうとしていることがいかに無謀なことであるのかとか、そういった要素で色々と説明ができてしまっているのも良いですね。

 そして『アビス』に挑んだ者たちが地上へ帰ってこられない本当の理由。これは読んで『その手があったか』と感心していただきたいので、是非とも本文にて。



 と、これだけ書くと『ほのぼのな冒険ファンタジー』っぽいんですが。

 アビスと銘打つだけあって、話が進んでいくと(つまり深く潜っていくと)徐々にそのエグさ、えげつなさが姿を見せ始めます。



 リコがボタボタと血の涙を流し、

 リコが何度となくゲロを吐き、

 リコが毒に冒された上腕を切断しかけ、

 リコが胎児の頃に○○○いたという過去が明らかにされ――



 ……リコがリョナられる話ではありません。念のため。

 他のキャラもひどい目に逢っています。(なおひどい)



 表紙の可愛らしさだけに惹かれて購入すると(良くも悪くも)裏切られます。

 僕は良い方向に裏切られてワクワクしていました。




 とはいえ『境界線上のリンボ』とか『棺担ぎのクロ』とか『ハクメイとミコチ』が好きな方はきっと好きになるシリーズです。

 あ、あと、『世界樹の迷宮』にドップリだったそこの君にもお勧めだ。





境界線上のリンボ





棺担ぎのクロ





ハクメイとミコチ



 というか境界線上のリンボに2巻があったことが驚きだし、ハクメイとミコチの4巻が1月15日に発売ということを、この記事を書いていて知りました(ポチー)。

 情報を発信しようとしていると知らないうちに情報が集まってきますね。



 異世界感という意味では、メートル法ではなく独自の単位系を名前だけでもいいから使って欲しかったなあとか、調味料に味噌があったりとか(日本なんでしょうか)、味噌はいいとしてもせめて何が原料なのかくらいは書いてくれると想像が広がりんぐなのになあとか、そういうところはもっともっと徹底してほしかったなーという印象はあります。

 けれど、それらを差し引いても十分に魅力的な本作。



 あとですね、旦那。こいつはナイショなんですがね。



 2巻でロリとショタの上裸を拝めますよ。

 ロリの全裸も拝めることが分かりましたよ。

 ゲロ吐いたり上腕切断未遂したりしますが。



©青聿書房 Aofude Shobo