漫画|小百合さんの妹は天使 妹ちゃんが比喩じゃなく天使
小百合さんの妹は天使
ひとことで言うと、姉妹の甘々百合です。
「魚の見る夢」のような倒錯を前面に押し出した暗くビターな百合ではなく、「神様ばかり恋をする」のような明るく甘々な百合です。
神様ばかり恋をする(2巻はまだ出ないんでしょうか……)
花屋で働く地味な女性、小百合さん。
そんな彼女が、親の離婚によって生き別れになった妹と十三年ぶりに再会。
「お姉ちゃんに会いたいとお願いしていた」妹は天使になり、お姉ちゃんとコイビトになるため、小百合さんと二人で暮らすようになる。
(ちなみに妹が天使に見える人はごく少数)
出会ったはずみにキスしてしまったり、デートに行ったり、同じベッドで寝たり。
天使な妹ちゃんから熱烈なアプローチを受ける小百合さんは、戸惑いながらも妹となんとかかんとかやっていく。
妹ちゃんが天使になった理屈とかはどうでもいいんですよ。
ここに百合がある。
僕は百合が読みたい。
それでいいじゃないか。
それで……それで……
妹「私・・・おねえちゃんとセックスしたい・・・!」
姉「・・・?」(呆けた顔)
せや!それや!
妹ちゃん、はようパクっと姉ちゃん食ってまえや!
いえ、レズセックスにしか興味がないわけではないのですよ。
レズセックスがあると嬉しいというだけで、ソフトな百合も素晴らしいと思います。
ボロが出てきましたが、ともかくシュガーな百合は大好きです。
citrausみたいなビターな百合も同じくらい大好きです。
citrus 1~4
つまりお前百合なら何でもええんちゃうかというとそうでもなくアンテナにひっかからないものもあるのですが、そうであっても今後も僕の本棚では百合専用の棚が四列ほどを占めるでしょうし、Kindleの「百合」コレクションの冊数が膨れていくことは疑いようのない未来です。
漫画|私の無知なわたしの未知 溺死していく百合
百合には付きものの単語、
「耽美」
我を忘れて事物の美しさに思いを深く巡らせること。
私の無知なわたしの未知
この作品には「耽美」より「溺死」という言葉がふさわしいのかもしれません。
周囲から何も知らされずに育った無垢な女性、嶋田湊(しまだみなと)と、
歯に衣着せぬ物言いが特徴的な職場の先輩、朝海真耶(あさみまや)。
OL二人をめぐる恋愛模様が描かれます。
嶋田湊の周囲の人間は優しく、残酷な現実を彼女に突きつけないようにしていました。
嶋田湊はそんな周囲の人々の望むがまま・言われるがままに生きてきました。
しかし、朝海真耶との出会いをきっかけに自らを巡る様々な人間関係のもつれが露わになり、彼女が無知であったがゆえに、未知であった真実に振り回されます。
まるで水に溺れ、もがき苦しむかのように。
女の子がキャッキャウフフしている百合ではなく、昼ドラのような(もはや慣用句)ドロドロした百合です。
「僕は女の子がキャッキャウフフしている百合の方が好みなんだよなあ」と思っていたのですが、よくよく考えたらユリ熊嵐を好むという点で嘘八百もいいところということに気づきました。
ごめんなさい。ドロドロな百合も大好きでした。
僕は百合ならなんでもよかったんです。
さておき、残念ながら、読んでいてハッピーな気分には(たぶん)なれません。
それでも本作を読み進めてしまうのは、嶋田湊が本質的に持つ「明るさへ向かおうとするベクトル」のようなものが物語に働いているからなのだろうか、などと考えてしまいます。
あるいは、物語に組み込まれた「人情ミステリめいた仕掛け」の行く末を見届けたいという好奇心が働いているのか。
文句を一つ言うとすれば、Kindle版だと1巻1巻が短いので、まとめて出してほしかった、というところですかね。端末で他の本を探すときに存外に面倒なので。
Kindle版まとめ買い
ともあれ、Kindle版の完結が待ち遠しいところです。
願わくは、嶋田湊が周りの優しさに溺死せず、水面の空気を得られますように。
あ、溺死系の百合といえば「魚の見る夢」もお薦めです。
こちらは、実の姉妹が様々な鬱屈した感情と屈折した愛情をもつれあわせる溺死系の……なんだ最初からドロドロ系も好きなんじゃないか(自己憤慨)。
漫画|メイドインアビス
メイドインアビス(1)~(4)
あるとき発見された大穴、アビス。
『全て踏み明かされたこの世界の 唯一最後の深淵である』
本分より引用
アビスから発掘される『遺物』は千金の価値を持つ。
名誉、金銭、好奇心、それぞれの理由で、それぞれの『探窟家』がアビスで命を落とした。
『探窟家』が集う穴の外縁にはいつしか街まででき、『探窟家』は相互扶助の組合を作り、『探窟家』を志す者へ訓練を施すようになった。
そんな大穴に挑む幼い少女、リコは、アビスの第一層で一体のロボット、レグと出会う。
レグは記憶を失っていたが、すぐに順応し、探検隊の見習いとして生活することとなる。
そんなとき、偉大な探検家であった母親からの手紙を受け取ったリコは、レグと共にアビスの底を目指すことを決意する。
推定深度20000mの奈落の底で、リコとレグを待ち受けるのは一体――
とまあそんな概要です。
まずは作画の丁寧さが素晴らしい。異世界感がよく描かれていて、眺めているだけで幸せになれます。まるで絵本のようなファンタジー。
また、探検隊の『笛』という階級システムは人物の練度を端的に表現できて良いなあとか、そのために見習いの『赤笛』であるリコが挑もうとしていることがいかに無謀なことであるのかとか、そういった要素で色々と説明ができてしまっているのも良いですね。
そして『アビス』に挑んだ者たちが地上へ帰ってこられない本当の理由。これは読んで『その手があったか』と感心していただきたいので、是非とも本文にて。
と、これだけ書くと『ほのぼのな冒険ファンタジー』っぽいんですが。
アビスと銘打つだけあって、話が進んでいくと(つまり深く潜っていくと)徐々にそのエグさ、えげつなさが姿を見せ始めます。
リコがボタボタと血の涙を流し、
リコが何度となくゲロを吐き、
リコが毒に冒された上腕を切断しかけ、
リコが胎児の頃に○○○いたという過去が明らかにされ――
……リコがリョナられる話ではありません。念のため。
他のキャラもひどい目に逢っています。(なおひどい)
表紙の可愛らしさだけに惹かれて購入すると(良くも悪くも)裏切られます。
僕は良い方向に裏切られてワクワクしていました。
とはいえ『境界線上のリンボ』とか『棺担ぎのクロ』とか『ハクメイとミコチ』が好きな方はきっと好きになるシリーズです。
あ、あと、『世界樹の迷宮』にドップリだったそこの君にもお勧めだ。
境界線上のリンボ
棺担ぎのクロ
ハクメイとミコチ
というか境界線上のリンボに2巻があったことが驚きだし、ハクメイとミコチの4巻が1月15日に発売ということを、この記事を書いていて知りました(ポチー)。
情報を発信しようとしていると知らないうちに情報が集まってきますね。
異世界感という意味では、メートル法ではなく独自の単位系を名前だけでもいいから使って欲しかったなあとか、調味料に味噌があったりとか(日本なんでしょうか)、味噌はいいとしてもせめて何が原料なのかくらいは書いてくれると想像が広がりんぐなのになあとか、そういうところはもっともっと徹底してほしかったなーという印象はあります。
けれど、それらを差し引いても十分に魅力的な本作。
あとですね、旦那。こいつはナイショなんですがね。
2巻でロリとショタの上裸を拝めますよ。
ロリの全裸も拝めることが分かりましたよ。
ゲロ吐いたり上腕切断未遂したりしますが。
小説|COP CRAFT コップクラフト
小説|ハードボイルドなライトノベル COP CRAFT コップクラフト(1)
COP CRAFT (1)
あるとき異世界に通じるゲートが開き――
と、冒頭の一文だけで「あー、ここんとこ少々食傷ぎみな、お決まりのアレ系ファンタジーか」と思いきや、内容は血と汗と硝煙の匂いが行間から立ちこめる、ハードボイルドな刑事物。
異種族との交雑をきっかけとして発生した様々な犯罪の捜査を担当する『特別風紀班』の刑事、ケイ・マトバと、ゲートの外側から来訪した異世界の騎士、ティラナ・エクセディリカとの凸凹コンビによるファンタジィ・サスペンス。
二人は『妖精』を原料として精製される麻薬の取引を追う。
ケイは無論、刑事として。
ティラナは誘拐された友人の『妖精』を保護するために。
とまあ、このへんはライトノベルによくある設定です。
妖精を原料とする麻薬という時点でライトではない気もしますが。
足を使った地道な捜査をはじめとして、情報屋との裏取引、ネットを活用した素早い情報収集、と読んでいて飽きがこない捜査の手管も見所のひとつ。
劇中、ぶっきらぼうで口の悪いケイは、生真面目で儀礼的なティラナとしばしば衝突するが、やがてお互いの強さを認めていく。
といった筋立てはハードボイルドな刑事物といった感じです。
ライトノベル要素とハードボイルド要素がうまくミックスされていて、よくできているなあと感心して読んでいました。
後書きで「やられたわクソが」と思わずKindle Fireを壁に投げつけたくなったのも良い思い出。
残りの四冊も早々に読んでしまいたいところですね。楽しみ。
欲を言うならば、それぞれの登場人物についてもっと掘り下げてほしかったのですが、海外ドラマを彷彿とさせる映像的な作品ということもあって、切り捨てたのかもしれませんね。内面を掘り下げると往々にしてテンポが悪くなりますし。
本来であれば書き手か書きたいであろうところを必要に応じて押さえるというのもまた技術。
ライトノベルでハードな作風、というものが好き(具体的にはダブルブリッドとかブラックロッドとか)な方には是非ともお薦めしたい本です。
あと、強い女の子が好きなあなたにも是非お薦めしたい本です。
Kindleでは1~5までが読めるようです。
似たテイストの小説だと『風に乗りて歩むもの』も、ライトノベルでハードボイルドな刑事物をやっています。こちらもお薦めです。
お薦めなんですが、Kindle化はされていないようです…
紀伊國屋書店のKinoppyなら読めたはずなので、そちらからどうぞ。
漫画|猫瞽女と少女終末旅行
最近はKindle Fireで漫画を読むことが多く、
また読んだその場でKindle Fireを使って感想をTwitterにて呟いています。
しかしTwitterだと140字の制限がきつくて本の魅力を伝えきれません。
かといって気合いを入れて長ったらしく書評を書くのも性に合いません。
というわけで、読んだらひとまずTwitterで簡単に呟いておいて、
週末とかにちょっと丁寧に本を紹介していくことにしています。
とはいえ1冊あたり400字弱で。
片倉の趣味嗜好のせいで、あまりメジャーではないし流行り物でもありませんが。
あと、紹介するものに節操がないです。
猫瞽女 ―ネコゴゼ― 1巻 (ヤングキングコミックス)
旧ソに侵略された1950年代の日本が舞台。
すんごくざっくり言うと座頭市リスペクト。
主人公の盲人・夜梅が振るう仕込み三味線の剣戟、
付き従う僧の鶯の復讐心、
任侠な言い回しと、好きな者にはたまらない。
なによりこの二人、猫耳である。
理由は分からないが、猫耳である。
だがそれがいい。
2巻もKindle化されてました。
少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)
あと2と3巻も出てます。
続きを読みたければ単行本を買って作者を買い支えましょう。