【電書のすゝめ第一回】二次創作小説の電子版、PDFだけで出して(読んで)ませんか?

雑なまとめ

  • EPUB
    ひとつのファイルで様々な端末に最適化した読書環境を提供できるよ!
    でも凝った組版は再現できないよ!
  • PDF
    凝った組版が再現できるし、リーダをインストールして貰う必要もないよ!
    でもマルチデバイス対応と謳うには無理がありすぎるよ!

 

発端

まずこの画像をご覧下さい。

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(500人以下ですが)僕のフォロワーは二次創作関係の方々が圧倒的多数です。

このアンケートを取ろうとした理由は
「二次創作小説の電子版、あまりにもPDFが多すぎるのは著者の都合で、
読者はPDFよりEPUBやmobiを望んでいるのではないか」
という仮定があったからです。

現実は違いました。100票が集まるくらいまでは
PDFがEPUBに対して四倍近い票数をmobiに対して十倍近い票を集めていました。

100票を越えたあたりでオリジナルを中心に読む方々の目にも留まったようで、
EPUBやmobiにも票が集まりましたが、PDF優位の結果は変わりませんでした。

 

さて。
アンケートを取っている途中、方々から
そもそもEPUBって何?
という意見を多数頂きました。

 

なんてこった。

 

アンケート設定がガバガバだったってことじゃねーか。
いやそこじゃない。二次創作界隈ではEPUBが知られていない。
そういえば僕も電子版の頒布でEPUBを見たことが無い。

 

というわけで、今回は

「そもそもEPUBって何? PDFとどう違うの?」

ということを、それぞれのメリット・デメリットを挙げながらご説明します
Kindleで読めるmobiはEPUBから簡単に生成できるので割愛します)

 

 

EPUBって何?

 
www.oreilly.co.jp

オライリーのこれを読め。無料だ。以上。

 

というわけにもいかないので、ざっくり説明します。

EPUBとは電子書籍、特に文字を中心とした書籍を
様々な環境で可読性を保ったまま提供する
ことを目的として策定されたファイルフォーマットです。
(少なくとも僕はそのように認識しています)

 

利点

  • 電書を読む端末を選ばない
    端末で読みやすい文字サイズや背景色をアプリ側で設定できます(リフロー形式といいます)。フォントまで設定できる場合も。
    ぶっちゃけこれが最大の利点です。
    例としてkoboで開いた自著の「まいのわ嵐(EPUB版)」を示します。

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    こんな感じです。文字の大きさや背景色を自分にとって読みやすい形で変えられます。koboの場合、フォントは元々用意されているものを選ぶ形のようです。
    (裏技はあるようですが自己責任で)
    なお、厳密にはEPUBを読むアプリ(EPUBリーダ)が必要です。
    AndroidだとBccksReaderや楽天koboなどが使いやすいです。
    iOSにはEPUBを読めるiBooksがプリインストールされています。

  • ファイルサイズが小さい
    EPUBの内容は基本的にHTML5準拠で書かれたxhtmlの集合体です。
    要するに内容はほぼ全てテキストファイルなので軽いです。
    ファイルサイズを大きくする要因はイラスト、音楽、動画の埋め込みです。

 

欠点

  • (リフローの場合)凝った組版は再現できない
    現状、二段組みさえ再現できません(厳密には対応が不完全)。
    いわんやページ飾りともなればお察しです。
    凝った組版EPUBで再現するなら固定レイアウト(要するに画像化)にすることとなります。
    同人小説を書く人が組版にこだわりを持つことが多いのは重々承知しています。リフローでは組版を再現できないというのは、十分なデメリットでしょう。

  • EPUB知名度が低い
    EPUBのファイルフォーマットは比較的近年に策定されたものです。
    現状の最新規格であるEPUB3は2011年、日本語組版の最低用件が定められたのは2014年のことです。
    セルフパブリッシャー(Kindleとかで電書を出版している人たちのこと)の間ではよく知られた規格ですが、二次創作小説をKindleで出版するわけがないので、二次創作界隈におけるEPUB知名度は低いです。
    どうデメリットになるかというと読者が「よく分からないからPDFでいいや」と選択する可能性が高いです(あんなに可読性が高くなるのに!!)。

 

 

PDFじゃダメなの?

別にダメじゃないです。PDFにも利点と欠点があります。

 

利点

  • 凝った組版でも再現できる
    印刷所に入稿したデータから断ち落としの領域を抜いて頒布すればおしまい!
    そもそもPDFは紙媒体に出力した場合と同じ見た目を再現することに特化しています。組版を再現できるのは当たり前です。できなかったらえらいことです。
    例として自著の「まいのわ嵐」を示します。

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    ……あまり凝ってはいませんが、
    右上のページ飾りだったり、二段組みの間に斜線の集合で境目を入れたりしてます。こういうのはEPUBは苦手で、PDFの独壇場です。

  • だいたいの端末にPDFリーダが標準で搭載されている
    EPUBと異なりPDFはリーダをインストールする手間が不要です。
    (とりあえず)環境を問わずに配布できるのは大きな利点です。

欠点

  •  スマホで読みにくい

    例えばA5版の小説をそのままPDF化したとしましょう。

    スマホで読もうと思ったらピンチアウトしないと読めません

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    (我がことながら)読めるかボケ

    いやもう正直ウンザリします
    手軽に持ち運んで読みたい人にとっては致命的です。
    タブレットなら読めないこともないでしょうが、画角が書籍と異なるので、主に上下に余白が生まれます(実際生まれています)。ここ、無駄な領域ですよね。
    スマホ用のPDFを用意するのもひとつの手段ではありますが……

  • 右綴じを認識しないPDFリーダがけっこうある
    iBooksがまさにそうです。
    縦書きの小説を右綴じで再現できない=スワイプ方向が読書方向と逆になる
    というのは読書の際に大きなストレスとなります。
    あと、Adobe系のソフトを使わないとそもそも右綴じの設定ができなかったりします。

  • ファイルサイズが大きくなりがち
    ほとんどの場合、PDFで頒布するときはフォントを埋めこむ(エンベデッド)することになるかと思います。色々なフォントを使う度にファイルサイズがでかくなります。
    あと、作る側はいちいちエンベデッドされているフォントがそれを許可しているかどうか確認しなければいけません。正直面倒ですコレ。

 

 まとめ

冒頭と同じですが

  • EPUB
    ひとつのファイルで様々な端末に最適化した読書環境を提供できるよ!
    でも凝った組版は再現できないよ!
  • PDF
    凝った組版が再現できるし、リーダをインストールして貰う必要もないよ!
    でもマルチデバイス対応と謳うには無理がありすぎるよ!

 

以上です。

次回は「じゃあEPUBってどうやって作るのよ」てな感じのことをご説明します。
ぶっちゃけ以前書いた覚えがありますが、

ktkrao1.hatenablog.com

ktkrao1.hatenablog.com

 

改めて書き直してみます。

 

 

※内容に間違いや不足などありましたらどんどんご指摘ください。
 僕はEPUBの内部仕様に詳しいわけではありません、
  記事の精度や質が上がれば喜ぶ人が増えます。

©青聿書房 Aofude Shobo